スウィッチ!
電車の窓から、めずらしくボンヤリと外を眺めていました。
普段は音楽を聴いたり本を読んだり眠ったり、とかく何かをしたがります。昨日もそうして過ごす、という選択は可能だったわけですが、しかしわたしは景色を眺めていました。
よく「人生に無駄な事はない」と言います。まったくその通りだと思います。「人生に有意義に捉えられない事はない」と言い替えるとより明らかでしょう。
こうした言葉自体にさほどの意味は感じませんが、しかしこれを実現させながら生きてみたいものだ、とは思います。ボンヤリとしたその生活をも活かしきることは、やはり容易ではないのでしょう。
友人―そう、以前登場した彼女です―に、「文章がきれい」とほめていただきました。
ほめ言葉は何であれうれしいものですが、これは本当に心にしみわたる一言でした。
彼女の俗っぽい文章はかえって持ち前の快活さも感じさせ、何より「きれい」の3文字が言いようのない温かみと甘美さを漂わせていました。
ここまで書いてようやく、わたしは自らがいかに野暮であるかに気付きます。なんとはなしに、デリダの言う(書く)暴力性を思い返しています。
とまれ、井上靖風に言えば、美しい故里に生まれながら美しい心も持たないわたしですから、せめて文章くらいは美しくありたいと思うのです。